神話の里・都城ワイナリー

【都城ワイナリー】

宮崎県の都城ワイナリーに行ってきました!

都城ワイナリーは鹿児島県との県境である霧島連山の道中にあり、
古事記に記されている神話の神々をモチーフにしたワイン名と名前が特徴
個人的には、都内で見かける機会も少なく、ヤマブドウ種を使用した個性あるワインを作られるということで気になっていました。

出水から1時間半ほどかけて車で向かい、
山道を登っていくと、大きな霧島神宮の大鳥居が見えてきます。
そこから10分ほどの場所には、養鶏所やBBQのできるレジャースポットになっており、その並びに都城ワイナリーは位置。

ワイナリーの標高はおよそ600mほど。
ワイナリーから見える位置と、少し山を登った先にもブドウ畑を持ち、
それぞれの場所でブドウの栽培をされてます。

栽培ブドウはヤマブドウ種を主体とした、
カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ソーヴィニョンブランなどといった国際品種との交配酒が栽培のメインで、
垣根に仕立てられた畑には黒ブドウ、白ブドウがそれぞれ並びに植栽されていました。

チーフを務められている井上さんに、まずは畑の紹介をしていただきました。
お話を聞きながら、もうすでに成熟し始めているツヤっとしたヤマブドウを摘ませていただくとそれぞれの味わいの違いがとても面白い。
ヤマブドウらしく、ブドウの粒はどれを見ても小ぶりではあるけど、配合種によって微妙に果皮が薄かったり、酸味が高いもの、青い香りが残っているものなど、微妙な違いでありながらもその違いははっきりと感じられました。

この日はちょうど台風が過ぎた2日後。
道中の山道はかなり荒れていて、折れた枝や傾いた木があった中で
畑も当然影響を受けており、ブドウ自体も雨の影響で糖度が1度ほども落ちてしまうそう。

収穫期は晴れた日が10日ほど続かないと糖度が上がりきらないという話は聞いたことがあったのですが、実際の数値で言うと10日ほどで糖度は5度ほども変わるそう。
目安として晴れた日は0.5度度づつ上昇をするというお話を聞かせていただきました。

雨が降れば、この糖度が一気に1度落ちてしまうというと思うと、ヴィンテージごとの個体差も頷けるし、糖度で1房あたりの単価が変わるというブドウ農家の方々の苦労も感じざるを得ません。

ただ、この霧島の条件で言えば標高が高く開けた土地ということもあり、しっかりと昼夜の寒暖差はあるそうで、日中の強い日射でブドウの糖度は引き上げられ、冷え込む夜中には酸味を保持してくれるとのこと。
ブドウの品種ごとで食べ比べる中でも、どれも酸味と糖度のバランスというのが感じられて、この土地の味わいを体験させていただきました。

降雨の影響を受けやすい日本の中でも、九州は特に台風の被害も大きい。
降雨から被害を守る方法として、日本独自の雨よけで「マンズレインカット」という山梨のマンズワインが生み出したブドウ樹の頭上に開閉できるビニールの傘がかかる方法が活用されているが、その方法は費用もかかる。
この都城ワイナリーでは、ブドウのその応用とも思える方法で、垣根のブドウが成熟している高さに合わせてビニールで手作業で傘をかけていた。

多くのワイナリーに伺ってきたが、この方法は久住ワイナリーさんでも見かけた記憶があり、都城の醸造長・山内さんと話をしていると久住ワイナリーの醸造責任者・土持さんとは醸造を教え合っている仲なのだとか。

高い湿度を表す現象で”気根”と言われる、ブドウの幹に根が張る状態を今回初めて見ました。
”気根”というのは、台風などの影響を受け、高い湿度の時。あるいは、非常に乾燥している時など、地上部と根のバランスが良くないときに出てくるのだそう。
気根が出ることでブドウへの影響というのは少ないそうですが、高湿を表す現象としてとても興味深かったです。

醸造設備を見学させていただくと、醸造施設自体も傾斜の土地に面していて、とても天井が高く設定されていました。天井を高くすることによって室内の下部の空気は気温が上がってもそこまで上がることがなく、醸造に適している施設になっていました。

施設を見学させていただく中で、タンクより直接ワインを注ぎ、試飲もさせていただけました。

試飲させていただいた白ワインは、「なんだと思う?」とブラインドで出しされ、感想としては柑橘やハーブが香り、発酵中の酵母の香りが立ち上るが、飲んでみるとシャープなしっかりとした酸味があり、それでいて糖度やほろ苦さといったボディも感じられてとても面白いワインを作られているなぁという印象を受けました。

都城独自でソーヴィニョンと山葡萄の交配品種があるということを畑で聞いていたので、それではないかと聞いてみると、なんとこれが”デラウェア”。

デラウェアというと、とてもジューシーでフレッシュなワインや、和柑橘を思わせるオレンジ色のワインができるイメージがあるのですが、ここまでボディがあって酸味も保ちながらハーブ香るワインは珍しいと、衝撃を受けました。

聞いてみると、これは凍結濃縮したデラウェアを使用したワインとのこと。

糖度が本来18〜20程度のブドウを凍結させ、解凍する過程で27〜28度ほどまで糖度が上がった液体を完全に発酵させたワインだそう。

ちなみに、このやり方は甘口ワインの醸造によく用いられる方法で、糖度を残したまま醸造されることが多い。

完全に発酵させた状態でワインを作るところは少ないということもあり、とても驚かされました。

さらに、こちらのベースワインは赤ワインを作るときにも重要な役割を遂げます。酸味を加えるために、赤ワインにこちらを加えることで、ワインに欠かせない酸味の土台を作っているそうです。

もう一つ、試飲させていただいた赤ワインも非常に興味深く、そちらはしっかりと色の濃い赤紫色をしていて、香りには熟したブルーベリーやカシス、ハーブのニュアンスが取れて、飲みごたえのあるワインでした。

こちらは、発酵させたマスカットベーリーAを40%ほど搾汁し、残りの液体と醪を他の醸造中のタンクに入れ、発酵・熟成させたものだという。

造りとしては、いわゆる『リパッソ』と呼ばれる北イタリアのヴェネト州で行われる手法で、搾りかすと共に浸漬させることで、果皮や種子からの成分をより強く抽出できるというメリットがあります。

しかし、作業としてはタンクから搾りかすを出し、再度タンクへ移すという作業を考えると、非常に手間がかかっている事が感じられます。

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代表取締役の山内さんよりお話を沢山聞かせていただきました。
幼い頃からご実家で酒屋を営んでいた山内さんは、元々はゼネコンの企業に勤めてから実家の酒屋業に受け継いだのだという。
その後、現在はこの都城ワイナリーには3人しかスタッフがいないということもあり、草刈りや畑仕事、醸造の仕事まで全て行なっているそうです。
近隣の学校の方や、関連企業の方からボランティアも来てくださるそうで、そのおかげで作業もなんとかなっているとお話くださいました。

その他にも、山内さんは昔からソムリエ協会からのお仕事も請け負っており、かつてのフランスを回った日のことや、そこで知り合ったワイン関係の方々のお話も沢山聞かせてくださいました。
その当時は「自分がワインを作ることになるとは思わなかった」と話しており、ワインの仕事をして行った先に今の都城ワイナリーの仕事があるのだそう。
醸造に使用しているのは自社の葡萄だけではなく、広島の”せらワイナリー”や島根の”島根ワイナリー”などと購入ブドウで醸造をしているそう。
他社ワイナリーとの関係は良好に築き上げており、特に九州ではワイナリー同士が手を取り合って醸造について勉強しあっているそうです。

これまで関係を築いてきた山内さんの信頼が感じられます。

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