Le Sincérité #3

今回で3回目の開催となるイベント 『Le Sincérité #3』を開催しました。
このイベントは、調理師専門学校時代の同級生で、フランス料理人の杉田周人と、元料理人でフリーソムリエの私、園部圭祐の2人が行なっているイベント。

学生時代から料理に真摯に向き合い「おうちレストラン」を企画していた周人は、卒業後もクラシックなフランス料理を出すお店で修行して、スーシェフまで経験し、今は”Asia Best Restaurant”で第2位に選ばれ、ミシュラン2つ星を獲得した名店『SÉZANNE(セザン)』で料理を提供しています。

一方、私・園部はホテル料理人として務めてる頃にワインにハマり、ソムリエを取得してからは日本のワイナリーを巡り、料理人の感性を持ちながら日本ワインを中心に扱うフリーのソムリエになりました。

こんな2人が「クラシックなフランス料理」と「日本の酒を中心にしたペアリング」を表現するために始めたイベントです。
初回は手探りでやっていたイベントだったけど、すこしづつ手応えも感じていて前回でクオリティの部分にはかなり自信を持てるようにはなってきました。

やっていくほどに「さらにクオリティをあげたい」と言う思いも出てきているし、常に前より良いイベントをこれからもやっていければと思っています。
そんな自分たちの料理とペアリングを知ってもらうためにも、料理の色々、ペアリングの色々を書き留めました。

お時間があれば読んでいってください。

◆Menu & Pairing◆

◆Menu◆

・山盛りグージェール   
・ブーランジェール 鯖 
・セルヴェルドカニュ バターナッツ 
・タルトレット 茄子 鰹 
・アルビュフェラ シャルロット
・ブリオッシュアテット トリュフバター
・リゾット 甘鯛 サフラン
・キャラメリゼ 銀の鴨 ボルドレーズ
・タルトタタン 紅玉
・スコーン 無花果

◆Pairing◆

○クレマン ド ブルゴーニュ ブラン ド ブラン/エヴィダンス(仏・ブルゴーニュ)
○トットリSKY/北条ワイン(鳥取)
○身土不ニ マスカットベーリーA '19 /ヒトミワイナリー(滋賀)
○菊姫 山廃純米 熟成古酒 熱燗 /菊姫(石川)
○アルバリーニョ バリッカ '22 / フェルミエ(新潟)
○エミリア・ロッソ '05 / イル・マイオーロ(伊・エミリア・ロマーニャ)
○DEEP SEEK バーボンバレルエイジミード / アンテロープ(滋賀)

◆Non-alcohol pairing◆

○枇杷シード、カラメルレモン、タイム
○ 香駿(茶ノ花・鹿児島)、いちご、ラズベリー、ローズヒップ、ハイビスカス、燻製醤油
○煎茶(田中園・鹿児島)、トマト、レモングラス、陳皮
○ブルーベリー、シナモン、クローブ、アニス、ブラックペッパー、煮切り味醂

料理・ペアリング紹介

●グジェール/クレマン ド ブルゴーニュ ブラン ド ブラン/エヴィダンス

アミューズで初めに用意したのは『グージェール』
『グージェール』とはチーズを練り込んだ、塩味のあるシュー生地。
ブルゴーニュに起源を持つと言われており、ワインのお供には欠かせない。初めはこれを1つのテーブルに1台で提供することで、これからのフランス料理を共に食べる相手と「分かち合い」をテーマに。

「フランス料理である」ことを自分も感じて欲しく、選んだのはグジェールと同じ起源を持つブルゴーニュのクレマン。
ブルゴーニュではブドウの収穫を終えると収穫祭でその年のブドウが採れたことをお祝いする。
その収穫祭では、グージェールをつまみながら自分たちの仕込んだブルゴーニュのクレマンを飲むと言う風習に習った。
このクレマンはエヴィダンスという、24人が持つ畑のブドウを混ぜて仕込んだスパークリング。
シャルドネ100%のブランドブランを用意した。

ノンアルコールは枇杷シード、カラメルレモン、タイムを使ったスパークリング。
枇杷の種を煮出したシロップと、国産レモンをキャラメリゼしたシロップを混ぜ、熟成シャンパーニュに近い風味を演出。
グジェールに加えられることも多いタイムの香りも加えて仕上げることで、グジェールとの親和性も高める狙い。

●ブーランジェール 鯖 

”パン屋風”の意味合いを持つ”ブーランジェール”は、パン屋さんがパン釜で自分たちの賄いにじゃがいもや玉ねぎを使った料理を作ると言う所から。
メインとなる食材は鯖。鯖は酢締めにし、桜のチップで燻製したものを使用。
インカの目覚めのローストと、キャラメルオニオンをミルフィーユ状にし、タイムのアクセントで鯖を提供。
本来家庭で食べるような素朴な料理だったものをレストランの一皿として仕立てた。
海を感じさせる水色の信楽焼を器に、「寿司」をイメージした見た目で提供

●セルヴェルドカニュ バターナッツ   / トットリSKY

『絹織物職人の脳』と言う意味を持つ”セルヴェルドカニュ”
クリームチーズにエシャロットやハーブを加えたものだが、今回はシェーブルチーズを使用。
バターナッツカボチャは9種類のスパイスでピクルスに仕立て、火を入れたピューレと合わせた。
ピクルスは上部の細い部分を使い、ピューレには下部の甘みが強く柔らかい部分を使用することで余すことなく一つの素材を調理し切っています。

ここにはディナーのみのペアリングで、鳥取の北条ワインさんが造る『トットリSKY』を。
レーズンのような濃密さを持ちながら、柔らかい酸味を持つスパークリング。
ほのかに甘みも感じられるスパークリングなので、チーズの質感やバターナッツの甘みにマッチするだろうと言う考えから。
北条ワインさんは鳥取砂丘の砂地でブドウ栽培を行なっており、「量にはこだわらず、より良い品質を求め、付加価値のあるワインを。」と言うコンセプトを持って高品質なワインを生産され続けている。
北条ワインにはウクライナ出身の従業員を雇用しており、ウクライナの戦火への義捐金を募る活動も行なっているなど、平和への意識が高く個人的にもとても応援したいワイナリーです。

●タルトレット 茄子 鰹  / 身土不ニ マスカットベーリーA '19 ヒトミワイナリー

戻り鰹と茄子と言う、秋を代表する食材を前菜に仕立てた一皿。
茄子は様々な調理を施している。
焼き茄子のピクルス、焼き茄子のタプナード風ピューレを皿には彩り、叩いた焼き茄子のフランス料理”キャビアドーベルジーヌ”はタタキにした鰹を生ハムのフォンで固め、自家製のフィユタージュ(パイ生地)と共にタルト状に仕立てている。
ソースにはバターミルクとガーリックハーブのオイルでマーブル状のソースをアッパーで用意。
パイ生地に合わせるまろやかで、ニンニクの香りを移したソースで口中でのマリアージュを楽しんで頂いた。
合わせるワインは滋賀県のヒトミワイナリーさんが造るワイン『身土不二 マスカットベーリーA 2019』。

無濾過の「にごりワイン」造りで定評がある滋賀県のヒトミワイナリーさん。
マスカットベーリーAからは「フラネオール」と言う香気成分で醤油に共通する風味を持つ。加えて10ヶ月の樽熟成によって樽の香ばしさと酸化のニュアンスが加わり、鰹のたたきにマッチすると思った。焼き茄子やパイ生地もベーリーAは外さない確信があったし、無濾過ワイン特有の旨みは余韻も長く持ってくれる。
酸味を程よく出したかったので、温度は低めに提供。
ここに合わせるノンアルコールペアリングはこのマスカットベーリーAをイメージした赤ワイン風のドリンクを。
鹿児島県出水市のお茶屋さん『茶ノ花』さんから購入した香駿(こうしゅん)という茶葉の紅茶を使用。濃密な柔らかさも持ちつつ、スパイシーな香りをかもすこの茶葉はこのドリンクにピッタリだった。
黒葡萄のモストと、紅茶のタンニン分、ベーリーAに共通するベリーやハイビスカス、ローズヒップで香りと酸味を象った。
カツオ出汁がベースになっている燻製醤油で、出汁の旨味と、燻製のスモーキーな香りを少量加えて、鰹のタルトフィーユにペアリング。

●アルビュフェラ シャルロット/菊姫 山廃純米 熟成古酒 熱燗 菊姫

”アルビュフェラ”は、生クリームとフォワグラをつかった非常に滑らかなソース。”シャルロット”はフランス語で“貴婦人の帽子”を意味する料理名で、セルクルなどの型の周りに装飾を彩った料理で、アルビュフェラもシャルロットもフランス料理の古典的なレシピだ。
シャルロッテは周りにカブ、インゲン、ニンジンで彩り、中にはキャベツ、ベーコン、鶏肉のムースと、その間に酒をふんわりと効かせたフォワグラのテリーヌを挟む。
ソースはこのアルビュフェラに加え、ジュドプーレと言う鶏の出汁を極限まで凝縮したソースも添えられた。
華やかな彩りで、フォワグラやクリームといった現代でも高級食材をたっぷりと使うこの料理は、貴族の歴史を象徴するフランス料理の究極系の一つだと思う。

ここに合わせるペアリングにはインパクトを残したかったので、どっしりとしたフランス料理にあえて日本酒を用意。
福井のレストランに研修に行った時に、シェフと共に石川県の山中温泉にある『和酒バー 縁がわ』さんへ足を運んだ時に教えてもらった日本酒を熱燗で。
『菊姫 純米吟醸 山廃生酛仕込み 熟成古酒』は、山廃仕込み由来の豊富な乳酸でバターのような風味とまろやかなテクスチャーを持ち、2011年醸造の10年間熟成された酒はベーコンやフォワグラに共通するキャラメル感やスパイスの風味を添える。
燗付けの温度は香りが飛ぶギリギリの温度、62度の飛び切り燗まで上げることで柔らかい印象にしつつ、フォワグラの油脂分を溶かしながら口中でペアリングしてもらう狙い。

●ブリオッシュアテット トリュフバター

ブリオッシュはフランスのノルマンディー地方発祥のバターと卵を使った贅沢なパン。
”アテット”は”頭”を意味し、ポコンと頭をつけた昔ながらなブリオッシュの仕立て。今回提供したレシピは、シェフの杉田がタテルヨシノでの修行時代に作っていたレシピで作った。
贅沢なパンに自家製のトリュフバターで、パンでありながら脇役にせずに一品として提供。

●リゾット 甘鯛 サフラン / アルバリーニョ バリッカ '22 / フェルミエ

魚料理には甘鯛の鱗焼。
甘鯛も7日間の熟成を行ったものを使用し、鱗の柔らかい甘鯛の皮面をサクサクとした食感に仕立てた一品。
リゾットは魚介や甲殻類のを使った南フランス発祥のスープ、ブイヤベースで炊き上げ、桜エビと共に仕上げることで甲殻類の旨味を閉じ込めた。
ソースにはアサリの出汁をベースに、サフランの香りを加え泡のソースで用意した。
魚からリゾット、ソースまで魚介の美味しさを詰め込んだ料理に仕立て上げた。

ペアリングには『フェルミエ アルバリーニョ バリッカ '22 』
新潟駅から車で30分ほど南下したところにワイナリーが集まる、新潟ワインコーストのうちの一つ・フェルミエさん。
海岸から1km圏内の砂地に畑を持ち、スペインの海沿いリアス・バイシャス原産のブドウであるアルバリーニョに力を入れている。
海風に強く、ワインからも塩味が感じられ、ボディも酸味も持つので海の食材とアルバリーニョの組み合わせは基本的には間違いない。その中でも、樽熟成したバリッカの樽のニュアンスで力強さやまろやかさも加わるので、エビのリゾット、アサリとサフランのソース、鱗焼のクリスピー感にそれぞれ合わせた。

ノンアルコールペアリングではこの白ワインをイメージしたドリンクを。
白ブドウのモストをベースに、煎茶(田中園・鹿児島)、トマト、レモングラス、陳皮、花椒、海塩。
鹿児島県出水市の標高550mの高原で茶葉をオーガニック栽培する『田中園』さんの煎茶を、旨みを引き出すために前日から水出し。トマトのクリアなコンソメと、レモングラス、陳皮、花椒でエキゾチックな風味を加えることでエビの濃厚な味にアクセントを加えられるように。能登の揚浜式製法の海塩で塩味の奥行きを与え、アルバリーニョが持つような塩味をここで立たせた。

●キャラメリゼ 銀の鴨 ボルドレーズ / エミリア・ロッソ '05 イル・マイオーロ

メインディッシュには、杉田が直接産地にも足を運んだと言う、青森県で育てられた『銀の鴨』
フランス原産のバルバリー種を丁寧に育てた国産の鴨で、鴨の濃厚な旨味と赤身肉の美味しさが感じられる素晴らしい肉質。
骨つきの胸肉”コフル”の状態で、じっくりと火を入れ、皮面はキャラメリゼに。
切り分ける前にプレゼンテーションをすると歓声が上がった。

鴨肉を切り分け、メインディッシュをサーブ。
付け合わせには丹波の大黒本しめじのボルドレーズ、パースニップのピューレ、ポワローの焼きブレゼ。ソースはボルドー産の赤ワインをたっぷりと使って鏡面になるまで煮詰めた赤ワインソースで。

ペアリングはイタリア/エミリア・ロマーニャ州の『エミリア・ロッソ '05 / イル・マイオーロ』
前職のLA BONNE TABLEで鴨の料理に上司がこのイル・マイオーロのワインをペアリングをしていて、自分で合わせた時に衝撃を受けたペアリング。
イタリアのエミリア・ロマーニャ州でバルベーラを主体にブレンドしたフルボディの18年熟成赤ワイン。
熟成からくるスパイス感やカラメルのニュアンス、バルベーラの完熟した黒系果実の風味や、土っぽさを持つこの赤ワインは、鉄分豊富な鴨肉の赤身や、キャラメリゼした皮面、濃厚なソースボルドレーズに合わせる狙い。

ノンアルコールの赤ワインは、前菜のジュースに似ているが、それ以上にどっしりとしたフランス南西部で造られるようなフルボディタイプの赤ワインをイメージした。
黒葡萄のモスト、香駿の紅茶、ハイビスカス、ローズヒップまでは同じだが、そこにはブルーベリーでより黒系果実の風味を強調。クローブ、ブラックペッパー、シナモン、スターアニスを加えることで樽から来るような重厚感を。キャラメリゼに寄り添う熟成した風味も欲しかったので、仕上げに煮切り味醂を加え完成させた。

●タルトタタン 紅玉 / DEEP SEEK バーボンバレルエイジミード アンテロープ

デザートに用意したのはフランス・ロワール地方発祥のデザート『タルト・タタン』
タルトタタンはバターと砂糖を使った焼きリンゴにパイ生地を被せて焼き上げる、伝統デザートだが、これも一般的な仕立てとは少し形を変えて。
焼きリンゴの層にはラム酒と少量のブルーチーズの風味を効かせたムース状に仕立てた。そこにラムを効かせたホイップクリーム、その上には葉っぱ型の秋を感じさせるチュイールの食感でタルトタタンをイメージ。タルトタタンによく合うバニラアイスを添えるイメージで、ここには暖かいバニラ風味のソース『アングレーズ』を滴らし、アップルミントを添えて完成させた。
ここにあわせるペアリングは滋賀県にある、国内で唯一クラフトミードを専業で行う醸造所『ANTELOPE』の蜂蜜酒をペアリング。
バーボン樽で熟成させたミードは、樽由来の濃密なヴァニラや焦がしバター、それこそ焼きリンゴを思わせる香りを感じさせられる。

●スコーン 無花果 / インペリアルアールグレイ ミルクティー

アフタヌーンティーの定番、イギリス発祥のお菓子スコーン。
イチジクの赤ワイン煮をコンポートに仕立て、スパイス香るジャムにしています。
このイチジクも少量スコーンに混ぜ込むことで、スコーンだけでもイチジクが感じられる仕立てに。
定番のクロテッドクリームももちろん添えて。

ここでは紅茶をペアリングするのが僕らのイベントの定番。
ペアリングにはマリアージュフレールのインペリアルアールグレイを濃いめに入れて、ミルクティーに。
濃厚なミルクティーでイギリスのアフタヌーンティー気分を味わっていただけるミニャルディーズを用意しました。
紅茶コーディネーターの資格も持つシェフ・杉田がセレクトしました。

次回『Sincérité #4』 2/5(月)開催

第3回のメニューはいかがでしょうか?

次回のイベントも確定しており、このような予定になっています。

第4回 杉田×園部コラボレーション フレンチペアリングレストラン『Sincérité』

●日時:2月 5日 (月) 
ランチ  12:30開始 15:00終了
ディナー 18:00開始 21:30終了
料金:20000円 (ランチ・ディナー同様)
料理10品、ペアリング7杯
各部 6組12名様限定

●場所:千駄木露地
東京都文京区千駄木2-42-2

↓ご予約・お問合せは杉田、園部のinstagramメッセージよりご連絡ください。
杉田 Instagram
園部 Instagram

最高の料理、最高のペアリング、最高の時間を約束させていただきます。
お楽しみに。

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