”豚肉嫌い”が育てる、本当に美味しい”豚肉” 〜安川ファーム〜

”豚肉嫌い”が育てる、本当に美味しい”豚肉” 〜安川ファーム〜

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福井県大野市・安川ファーム “荒島ポーク “

福井の山奥·大野市で養豚を行なっている「安川ファーム」に訪問させていただきました。

こちらでは「奇跡の豚」と呼ばれているブランド豚”荒島ポーク”の生産を行なっています。

私が安川ファームに伺う前、荒島ポークを食べたのは一度だけ。

頂いたのは「荒島ポークとクスクス」の一皿。
醤油ベースでホロホロになるまで煮た”荒島ポーク”のバラ肉と、
優しいマイクロハーブの味わいで食べるクスクスのタブレ

料理を見た時に、荒島ポークを全面に出ている料理ではなかったのですが、タブレの中にある豚からは、しっかりと存在感が感じられました。

肉自体の香りの良さと脂身の雑味のなさ。
この豚肉の存在感をしっかりと表現されるように、柔らかい香りのマイクロハーブと、パラパラとほぐれる一皿にまとまりを与える生のホタテ。
少量しか使っていないのにこれだけ豚肉の存在感が感じられることに驚きました。

そんな豚が、どんな環境で育てばこのような味わいになるのか、伺ってきました。

臭みのないクリアな味わいの肉質

安川ファームに伺い、代表の安川美幸さんから直接お話を伺った。

そもそも、安川さんが養豚を始めたのは、ご自身が豚肉が嫌いだったから。
「豚肉特有の臭みが苦手で食べることが出来なかったので、豚肉の臭みを無くすにはどうしたらいいのかと十数年間ずっとそれだけを考えて豚を育ててきました。」

ファームに伺い、肩ロースともも肉を試食させて頂きました。

脂も付いてはいたのですが、やはり”臭み”と言うより甘い香りがあり、食べてみての印象も重たさを感じられない。
通常、もも肉は繊維が細かく入っているので火が入ると硬くなってしまうことが多いのですが、このもも肉の肉質は非常に柔らかい。
そして、肩ロースの脂身と肉の間には硬い筋があるのが普通ですが、ここすらもとても柔らかい。

食べてみての感想として、改めて魅力的に感じたのは、肉質の柔らかさと脂の香りの良さでした。

安川さんは、豚に与える餌には「人間が美味しく食べられる物」しか扱っていないという。
地場野菜と地酒の酒粕、その他の原料も、豚の健康状態を見ながら独自で餌作りを研究されている。

安川さん一家はなんと全員豚肉が嫌いだと言う。
だからこそ、食べるものによっての豚の肉質の変化にはとても敏感で、そういったところから餌作りへのこだわり見えました。
それだけのこだわりもあるからこそ、今では自分のところの豚肉以外は食べたくならないのだそう。

安川さんご自身は、ほとんど他所の養豚場に修行することなどはされていないらしく、「大きな養豚場で研修していたら、この豚肉は作れなかったと思う。」と話してくださった。
”自分でも食べられる豚”を育てることにこだわっているからこそ、その肉の美味しさに、自信が持てるのだと思います。

「奇跡の豚」荒島ポークが産まれるまで

越前大野の土地は、とても水が綺麗。

名水百選に選ばれるほどの湧水が、町の至る所から湧き出ている大野。

今でも住民の多くはこの湧水を生活用水として使っている。
豚の餌に使用している酒粕も、地元の「真名鶴酒造」から出た日本酒の搾りかすを使用しているし、この土地から育った野菜たちの栄養素も豊富。

この水に気付いてからは、それまで使っていた配合飼料は全て捨てたと言う。
この餌を研究し、3年かけて納得ができる餌を作った結果、豚舎からの臭いは無くなったのだと言う。

実際、訪問させていただいて感じていたのですが、自分の思う常識の中では牧場の近くなど近寄るだけでも臭いを感じるのがそれまでの普通でした。
しかし、牧場の近くに行ってもこの臭いというのはほとんどなく、そこにお話を伺うほどに納得ができたし、とても驚かされました。

ちなみに、今回実は、実際に養豚場に入ることはできていません。

安川ファームでは豚たちを守るために、厳重に養豚場を清潔に保っている。
人間がかかる病気は豚もかかってしまう。豚たちが病気にかかってしまえば養豚場内に一気に広まってしまうので、外部者の立ち入りは一切行っていないそうだ。

その中でも、安川さんが特に警戒しているのは「豚コレラ」

2019年に福井県の山奥で豚コレラに感染した野生の猪が発見され、瞬く間にその影響は広がったそうです。
県内の豚のほとんどが豚コレラに感染し殺処分にされ、県内の養豚場は壊滅状態。

実際、こういった病害の感染経路は可能性として非常に多岐にわたると言うお話を聞きました。

例えば、野生の猪が歩いた山中の、木の実などを啄んだ鳥がいたとして、その鳥たちは我々が生活をする路上で糞をしてしまいます。
人間たちがそこを歩けば、靴の裏は汚染され、その靴でファーム内を歩けば豚に感染する可能性がある。

そうしたリスクから避けるために、厳重な柵を設け、人の出入りを厳しく制限することで徹底的な衛生管理に努めている。
我々が敷地内に見学に入る前にも、靴の裏はアルコール消毒を行うなど、その徹底ぶりを感じました。

その成果、豚コレラの感染が収まった頃には、県内の養豚場はほぼ全滅状態。その中で安川ファームの豚はなんと一匹も感染しなかったのだと言う。
こうした事から、安川ファームは「奇跡の豚」の農場と言われるようになった。

しかし、実はこの段階ではまだ”荒島ポーク”というのはまだブランド化をされていなかった。
餌や衛生面にこだわりがいくらあろうと、この安川ファームの豚も市場に出れば「国産豚」の一つとしてしか扱われません。

その現状を変えたのが、大野に道の駅を作るという計画。

「県内で一番大きな規模の道の駅を作る」という計画だったのですが、それまでは市としての特産品は野菜や山菜くらいしか挙がらなかったそう。
そこに「安川ファームの豚をブランド化しないか」という話が持ち上がった。

それまでは育てた豚は組合が全て買い取ってくれていたのだが、ブランド化をすることによって、安川さんは自分で豚を売らないといけない。

不安を持ちながらも、そこに挑戦をされた結果、2021年4月に安川ファームとして初めての自社農場ブランド豚「荒島ポーク」が生みだされた。

安川ファームは現在養豚場としては日本で一番小さい農場で、荒島ポークは200匹程の豚しか育てていない。
その分、安川さんはご自身で、丁寧に大切に豚たちを育てていると話してくださいました。

●荒島ポークの行く先

LULLでは、どの時期でも大体荒島ポークをメニューの一部に登場させている。
安川さんと、LULLメンバー同士の絆も厚く、「荒島ポーク✖︎LULL」のコラボイベントも過去には行われている。

こうした絆があるからこそ、我々飲食人は食材を丁寧に扱い、生産者に敬意を持つことができるのだと思う。
安川さんも、自分の育てる豚がレストランで調理され、提供されていることをとても嬉しそうに話してくださってた。

荒島ポークは、現在福井県を中心に出回っており、レストランLULLだけではなく、同じく大野市の「ビストロ·シャルム」さん、前述の道の駅「越前おおの 荒島の郷」で提供されている。
関東近郊では、埼玉県の北本市にあるラーメン屋「麺屋ふく」さんなどでも食べることができる。

現在は、基本的に豚肉は半頭買いで販売をされているため、部位ごとでの購入することはできないが、それだけ様々な料理に広がっていくということでもあると思う。
ぜひ技術ある料理人たちの手によって、生まれ変わる荒島ポークを個人的にも食べてみたい。

荒島ポークを扱いたい方は是非園部や、nocsオーナー·小川さんに連絡してください。
相談に乗ります。

安川ファーム さん
福井県大野市吉28-10
https://yasukawafarm.jp/

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