海沿いの農園が作るブドウたち 〜フルーツパークOKAYU〜
あわら温泉 フルーツパーク OKAYU
レストラン”LULL”で使っているぶどう農家さんにお会いしてきました。
「あわら温泉 フルーツパーク OKAYU」の岡田さん
LULLのデザートでは様々なフルーツを扱っており、その中でもあわら湯のまちのほど近くにあるOKAYUの作るブドウはやけに美味しい。
岡田さんは、様々な種類の生食用のブドウを栽培している。
ちょうどこの時期、LULLのデザートの新作を試作しており、ブドウを4種類ほど「このデザートにはこのブドウが良い」と試行錯誤を繰り返していた。
実際に食べるブドウはとても香りが良く、ブドウ品種によっての個性がはっきりと現れていた。
では、なぜこの香りのいいブドウができるの
個性溢れる20種のブドウ
フルーツパークOKAYUでは公開しているだけでも20種類もの品種を栽培し、提供をしている。
●栽培ラインナップ
・シャインマスカット
・サニールージュ
・クイーンニーナ
・ビッテロビアンコ
・サニードルチェ
・オリエンタルスター
・ブラックビート
・サマーブラック
・ピオーネ
・サンヴェルデ
・紅環
・紫玉
・ナガノパープル
・デラウェア
・涼玉
・甲斐路
・高妻
・ブラックオリンピア
・ブラックフィンガー
いくつかの品種は実際に味見をさせていただいた。
・シャインマスカット
今、大人気の品種。日本の農林水産省が所管する農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によって育種・登録された広島生まれのブドウ。
甘味や香りの良さとみずみずしさが特徴的。
シャインマスカットは収穫する時期によって黄色と緑の物とあるが、市場に出回っているものの多くが緑色がはっきりとしたものが好まれる。しかし、黄色みがかっている方が熟していて甘みが強い。飲食店向けか、小売向けかによって販売する時期を変えているとお話しされていた。
・ブラックビート
「藤稔」に「ピオーネ」を交配し、生まれた品種。
基本的には皮を剥いて食べる品種らしいが、皮は比較的薄く、香りも良い。程よい渋さがアクセントにもなる。適度な甘さと酸味がある品種。
ピオーネに近いが、比較すると香気は控えめなので汎用性が高い。
・ブラックオリンピア
「巨峰」と「巨鯨」の交配品種。巨峰らしい糖度が高さで、甘さを強く感じることから「ハチミツぶどう」と呼ばれることもあります。果肉はとてもジューシーで酸味が控えめなので、より甘さを強く感じられる。
香りに個性があって巨峰にも近いが、より華やかさを持つブドウ。皮に厚みがあり渋みと香気成分も強め。皮を使ったジュレとかにすると香りが楽しめそう。
・サニードルチェ
「バラディ」と「ルビーオクヤマ」の交配品種。
種が無く、皮が薄いのでとても食べやすい。サクサクとした食感の果肉で、青リンゴのような風味がある。甘味と柔らかな酸味も感じられる、さっぱりとした食べ味のぶどうです。
・紅環(べにたまき)
山梨県の「カッタクルガン」から育成された、「マツコの知らない世界」でも取り上げられ話題になった品種。本来ピンク系の果皮だが、場所によって着色がしづらく渋みは控えめ。若い状態では酸味がなくて、独特の香り。
・甲斐路
山梨で開発されたマスカット系の交配品種。甘みが強く、ほどよい酸味がある印象。果汁が豊富で、実はトロッとした口当たり。皮が薄いので皮ごと食べることも可能。
岡田さんは、元々飲食店の経営もされており、「飲食店で扱うならこんなブドウがいいんじゃない?」といったアドバイスもしてくれる。
ただ単純に「完熟したブドウが美味しい」という観点だけでなく、あえて完熟し切る前の酸味のたったブドウをデザートに生かす方法や、
ブドウの特性の、トロッとした食感のブドウや、皮ごと食べられるパリッとしたブドウなど、さまざまな個性のブドウを提案してくださるのだそう。
ハウス栽培のメリットとその苦労
この越前海岸沿いでブドウ栽培をするのにはとても苦労していると言う。
その理由は海風。
海風は塩分を多く含んでおり、ブドウは病気のリスクが大きくなる。
また、季節によってかなり冷え込むため、ぶどうの熟度が上がりきらないそうだ。
そのために、ハウス栽培によってブドウ栽培を行なっている。
湿度の高い日本では、やはりハウス栽培の方が管理がしやすく、多くの農家さんはハウス栽培で果樹園や野菜農家をやっている。
お話を聞いていくとハウス栽培によるメリットとして挙げられたのは、大きく分けて2つ。
1つは、天候の影響が受けにくいこと。
特に海風から守ることもできるし、北陸側は晴れの日が少なく、雨、曇りが多く湿度も高い。こういった自然環境の影響から防ぐことができる。
まだ、密閉された空間にもなるので、病虫害からも守りながら栽培を行うことができる。
2つめは、温度コントロールがしやすくなること。
ビニールハウスによって外界と遮断をし、内部の環境管理がしやすくなる。この土地では湿度が高いために果実に栄養が行き渡らないので、加温制御によって糖度をあげたり、天窓を開けて換気を行うことも可能にしている。
これらの要素によって、フルーツパークOKAYUのブドウは美味しさを保つことができている。
しかし、ハウス栽培だからこその苦労もあると言う。
ビニールハウスを設置するのに、初期投資として大きなコストがかかる。現在は鉄やビニールなど、原料の物価高騰による影響を受けていおり、ここ数年で費用も大きく上がっているそうだ。
また、風が強いために、ビニールハウス自体が壊れてしまうこともよくある。
我々が伺った際にも台風の影響を受けた直後で、一部のビニールハウスはほぼ骨組みだけの状態になっていた。
そこにあったブドウたちも潮風を浴びて、ボロボロになっていた。
このビニールハウスも、直すのは皆さん自分で。
我々、飲食人に届く食材が、こういった苦労の先にあると言うことを知れた貴重な機会でした。